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【Linoツアー参加者インタビュー】

〜医療的ケアを必要とする子どもとのお出かけは、実現できる!かけがえのない思い出と経験ができた家族旅行〜

 

NPO法人Linoでは、医療的ケア児・者と家族を支援する活動を続けています。障害のある方やそのご家族にとって、旅行などのお出かけはハードルが高くなってしまっているのが現状です。在宅で生活する20歳未満の医療的ケア児・者の家族を対象とした調査では、96.8%が家族で外出や旅行をすることを望んでいる一方、実現できている家族はわずか17.2%という結果が報告されました(*1)。

Linoでは2019年から家族旅行を届ける「Linoツアー」を実施しています。これまで沖縄での海洋リハビリ体験ツアーやユニバーサルスタジオジャパンツアー、東京ディズニーランドツアーを行ってきました。当日は医療サポートスタッフが同行し、安全に家族旅行ができるようツアーを企画しています。

家族旅行という『非日常体験』を届けるLinoツアー。家族とのかけがえのない思い出づくりや、そのときにしかできない経験を大切にしています。これまでLinoツアーに参加されたご家族からは「無理だと思っていた旅行に行けたことで、自信がついた」などの声をいただくことができました。

今回は、医療的ケアを必要とする愛実(まなみ)さん(21歳)やご主人とともに、これまで2度Linoツアーに参加された藤居典子さんに、普段のお出かけで感じていることやLinoツアーの感想を話していただきました。

*1三菱UFJリサーチ&コンサルティング、厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業、医療的ケア児者とその家族の生活実態調査報告書、2020年3月

 

ホテルや飛行機の下調べと手配がなによりの壁。Linoがきっかけでお出かけへの一歩が踏み出せた

yuka:普段、休日はどのように過ごしていますか?現在のお出かけについて教えてください。

藤居:普段の土日は近所の遊歩道で散歩をしたり、ショッピングモールに行ったり。遠出のお出かけはほとんどしないですね。1時間以上かかる場所には、1年のうち数回しか行かないです。

例えば、私がひとりで散歩に行こうと思えば、寒い時期でも上着を着てマフラーや手袋をして靴を履いたら、すぐに出かけられるじゃないですか。でも、娘と一緒に出かけるときは、考えないといけないことが他にもたくさんあるんですね。

具体的には、薬が切れると娘の体の筋緊張が高まってしまうので、薬を注入するタイミングや薬の持参など、いろんなことに気を配らないといけません。娘の場合は吸引器や着替えなども準備して持っていかないといけないです。

他にも、娘は筋緊張が強いので、車いすに乗せるために10分ほど時間がかかることもあります。それで、元々考えていた薬のスケジュールがずれてしまうこともあるんですね。たとえ近所へのお出かけであっても、いろんなことを考えないといけないんです。

yuka:そんな中、藤居さんは2度Linoツアーに参加してくださいましたね。家族旅行をするうえで、どのようなことが壁になっていると感じますか?

藤居:情報の探し方ですね。例えば、家族だけでお出かけするとなると、ホテルひとつをとっても、娘の車いすが入る部屋かどうかを考えないといけません。膨大なネット情報の中で、どうやってホテルを選んだら良いかが分からないんです。どのホテルがベストかなどを考えながら自分ですべてを手配するのは、どうしても難しいなと思ってしまいます。

でも、Linoツアーでは自分でホテルや飛行機の手配をしなくて良いんです。慣れていないことをゼロから考えなくて良いので参加しやすかったです。

 

娘にいろんな経験をさせてあげたい。そんな夢が叶った沖縄での海洋リハビリ体験ツアー

yuka:ホテルや飛行機の手配をLinoがすると言っても、旅行には他にもハードルがあるように感じました。沖縄でのLinoツアーに参加すると決めた経緯について教えてください。

藤居:代表の杉本さんがLinoツアーに誘ってくれたのですが、最初は断っていたんです。実際、第一回目のLinoツアーにも声をかけてもらったものの、参加しませんでした。娘は90度の座位を取ることが難しいので、飛行機に乗れないと思っていたんです。

ただ、娘と同じように障害のあるお子さんのお母さんと話していたときに、ご主人が調子を崩して入院したという話を聞いたんです。これまでは「愛実に何かあったらどうしよう」と娘の状態が懸念材料でした。でも、その方の話を聞いて「私たちに何かが起こる可能性もある」とハッとしたんですよね。それで、「行けるタイミングでお出かけしておかないと、旅行できなくなる日が来るかもしれない」と思ったんです。

それと、ツアー当日まで日数があったというのも参加を後押ししてくれました。娘が飛行機に乗る準備ができるかなと思ったんです。1週間に1度のリハビリの時間を使って、理学療法士の先生と相談しながら、機内で座れるように訓練をしていましたね。娘だけではなく私と主人が機内でどう娘を抱えるかなども、先生と詳細にシュミレーションしました。

ツアー前は、沖縄に滞在している間に娘に何かあったらすぐ診てもらえる病院があるかを心配していました。でも、代表の杉本さんが看護師ということや滞在先の近くに大きな病院があると知ることができて、ツアーに参加することができました。

yuka:沖縄でのツアーにどのようなことを期待していましたか?

藤居:沖縄に行くと決めたものの、正直楽しみでは全然なくて……。大変という気持ちの方が強かったです。でも、娘にいろんなことを経験させたい。その願いだけでしたね。

それこそ、娘にとっては飛行機も新しい経験です。他には、海辺の砂に触れること。お風呂やプールなどで普段水に触れることはあっても、砂に触れる機会ってないんですよね。

障害のある子どもたちは、何かを経験する機会がどうしても少なくなってしまうと言われています。大きな経験じゃなくて良いから、いろんなことを経験させてあげたい。そんな気持ちでした。

 

沖縄に行けたから、どこでも大丈夫。一歩踏み出したら、自分の枠を超えられた。沖縄旅行がもたらしたもの

yuka:印象に残っていることはありますか?

藤居:海に入る前に現地のスタッフさんとの顔合わせの時間があって、初めて会う人なのに娘がニコニコしながら話を聞いていたんです。でも、いざ浜辺に行って海に入ったときは、ほとんど笑っていなかったんですね。家にいるときに安心してほっとしている顔とは全然違うんです。

旅行中はいつもと違う環境で、娘の表情が全然違いました。でも、それがよかったのかなって。それは、緊張することも娘にとってはひとつの経験で、必要だと思っていたからです。沖縄で非日常を体験できて良かったです。

沖縄に行った後、旅行中に撮った写真を学校や病院で会う人たちに見せたんですね。娘が周りの人から「沖縄に行ったの?」「こんなに海が綺麗なんだ」などと嬉しそうに声をかけてもらえたんです。そのときの娘が「私、沖縄行ってきたんだ」みたいな様子で、すごく誇らしげに見えたんですよね。それが、すごく良かったなと思います。

yuka:ツアーを振り返って、変化したことはありますか?

藤居:私自身が「旅行に行けるんだな」と思いました。沖縄のツアーに参加した次の年に、家族3人で軽井沢へ日帰り旅行に行ったんです。都心から離れたところに住んでいるので、沖縄のツアーに参加したときは羽田空港まで3時間ほどかかったんですね。これまでは娘を連れて車でこんなにも遠出をしたことがありませんでした。

でも、この経験があったからこそ、「沖縄に行けたんだから、軽井沢にも行ける。2時間で行ける軽井沢は近い」と感じて、基準が変わったんですよね。自分の枠が広がりました。

「与薬と注入の時間や方法を考えてやってみたら、実際にできた」という経験のおかげで、「軽井沢でもできる」と自然と思えたんですよね。「挑戦してみたらできた」という経験が、お出かけへのハードルを下げてくれました。沖縄に行くまでは、当日の医療的ケアや準備のことを考えると、正直遠出は無理だと思っていたんです。でも、実際はできたんですよね。そんな経験が開いていく可能性や扉の大きさを実感しました。

軽井沢に行こうと思ったのは、軽井沢で車いすごと気球に乗れるイベントがあることをFacebookで知ったからです。「娘と一緒に気球に乗れるなら行きたい。娘を気球に乗せてあげたい」と思いました。以前から私も気球に乗ってみたい気持ちがあって、娘と一緒に私も楽しみたいという想いもあったんです。実際に軽井沢には行ったものの、悪天候で気球は飛ばず娘と一緒に気球に乗る夢は叶いませんでした。

でも、この旅行に行ったからこそ出会えた方がいて、人の優しさに触れることができたんです。気球が飛ぶ時間まで待機場所で待っていたとき、「ずっとここで待つのは大変だから、家に来ませんか?」と声をかけてくださった方がいたんですね。3時間ほどの待ち時間に、娘は体を横にして休憩することができて、私たちは焼きそばまでご馳走してもらったんです。

元々の計画とは違いましたが、思いがけず素晴らしい方と知り合えて、忘れられない思い出ができました。「その日初めて会ったのに、どれだけ優しい方なんだ」と感動したんですよね。そんな出会いがあって、とても充実した時間を過ごすことができました。

 

 

行きたい場所に行き、話しかけられて楽しむ。見えにくい壁がある社会で「当たり前」の経験ができた東京ディズニーランドツアー

yuka:ディズニーランドでのツアーには、どのようなことを期待していましたか?

藤居:ひとつは、夜のディズニーランドの雰囲気。それと、「ディズニーリゾートライン」(*2)も娘に経験させてあげたかったです。

*2 東京ディズニーリゾートの周りを走るモノレール。東京ディズニーリゾートの最寄り駅であるJR舞浜駅と、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーを結ぶ。

yuka:具体的に、どのようなことが思い出に残っていますか?

藤居:ディズニーランドのキャストさんたちが親切なのは、元々知っていたんです。今回のツアーでは、ディズニーランド以外の場面で出会った方々の優しい対応が、特に印象に残りました。

ホテルからリゾートラインの駅までシャトルバスに乗ったのですが、そもそも娘はこれまでバスに乗ったことがなかったんです。大きな車いすでバスに乗れるか心配でしたが、ホテルの方から「席を取り外すので、大丈夫ですよ」と優しく声をかけてもらいました。

バスを降りて駅に着いてからも、駅員さんから「スロープは必要ですか?」と言われた場面がありました。リゾートラインの新型車両や旧型車両についても教えてもらえて、すごく優しかったです。発車のタイミングでは、手を振りながら「行ってらっしゃい」とあたたかく見送ってもらいましたね。

普段、娘が見ず知らずの人から話しかけられる経験っておそらく少ないんです。でも、ツアーの中で出会った方々は、実際に話しかけてくださったんですね。私はそれがとても嬉しかったです。みなさんがすごく優しかったですね。

yuka:たくさんの方々の優しさに触れる時間だったのですね。

藤居:Linoツアーには家族に同行してくれる医療サポートスタッフがいます。私たち家族の担当をしてくれた医療サポートスタッフの岩田さんからも、すごく嬉しい言葉をかけてもらいました。ディズニーランドでずっと付き添ってくれていた岩田さんから、最後に「一緒に過ごして愛実さんのことが少しわかってきたところでお別れだから残念です」と言ってもらったんです。

医療サポートスタッフの方は、充実した時間を過ごすために「次はどうする?」など、医療以外のいろんなことも一緒に考えてくれるんですね。例えば、私たちが操作が苦手なディズニーランドのアプリを使って、アトラクションの位置を確認してもらえました。他にも、娘を抱いてアトラクションに乗るときに車いすを移動してくれたり、たくさんの荷物を片付けてくれたり。ちょっとしたサポートがとてもありがたかったです。荷物を持ったり娘に靴を履かせてくださったりもして、いろんな場面で助けられましたね。

これまで家族3人でお出かけしたときは、自分ですべてのことを考えないといけませんでした。でも、今回は岩田さんがいてくれたのですごく心強かったです。「医療支援者を超えて私たちの仲間になってくれた。仲間が増えた。」そんな感覚になりました。

(チームがスムーズに動けるように、アプリを駆使してサポートしてくださいます♪)

yuka:ディズニーランドでたくさんの思い出をつくることができたのですね。

藤居:クリスマスパレードを見たり、アトラクションに乗ったり、実際キャラクターに会えたりもしました。暗くなるまでディズニーランドで過ごすことができましたね。娘はいろんな刺激を受けたと思います。良い経験ができました。

 

 

家族旅行という非日常体験が、毎日を彩る

yuka:2度のLinoツアーを振り返って、家族旅行という非日常体験は藤居さんのご家族にとってどんな意味があると思いますか?

藤居:私自身はそれほど刺激は必要ないんですが、娘には刺激を与えたいんです。娘にいろんなことを経験させてあげたいですね。以前は、「愛実に何かをさせてあげたい」という余裕もなかったんです。

だから、今は自分のやりたいことや欲しいものより、「愛実にいろんなことを経験してほしい」想いが強いですね。自分に余裕ができて、いろんな経験ができるように娘を応援できている今はすごく充実しています。今の生活がすごく幸せです。

yuka:最後に、今お出かけが難しいと感じている方へ、メッセージをお願いします。

藤居:「タイミングがすごく重要だと思います。人に言われて無理にお出かけをしても、嫌な経験があるときっとその先に続かないと思うんです。少しでも『行ってみようかな』と思ったときがタイミング。無理をせずそう感じたときにお出かけできたらいいんじゃないかな」と言うかもしれないですね。

そう思う反面、「行けるうちにお出かけした方が良いよ」という気持ちもあるかもしれないです。それは、小さいお子さんとしか乗れないアトラクションもあったりして、一定の年齢までしかできないことがあるからですね。

また、ある人に言われたことで強く印象に残っているのは、「悩んでいるときは、難しい方を選ぶと良いよ」という言葉です。もちろんすべての方に当てはまるわけではありませんが、私は娘と一緒に過ごす中で「難しい方を選んで良かった」と思った経験があります。

それと、私にはお出かけしたからこそ、出会えた人がいます。それで、私自身がいろんな刺激を受けることができました。お出かけの中で感じたことを、子育てに反映させようという気持ちにもなるんですよね。

yuka:今日はありがとうございました。

 

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■藤居典子 NPO法人Lino 理事。Linoツアー参加は今回2回目。

 

■yuka

profile:Linoの事務周りを時々お手伝い。準認定ファンドレーザーとして欲しい未来を創る身近な人を応援。社会人の越境体験を支援するNPO法人で活動。本業は英語発音トレーナー。

***インタビューは2時間半。藤居さんの、子育ての記憶と感情をたどる旅にご一緒しました。日常は、見えない「線」だらけです。その線がない”場所”で、まなちゃんと藤居さんは”当たり前”に楽しめた、と語ってくださいました。

これからもっとたくさん「楽しい思い出」が作られていくのでしょう。ほんの少しでもお役に立てる自分でありたい。

”楽しい”をみんなのものに解き放つLinoさんの活動は、多くの人をエンパワーしていきます!

 

 

■田中美奈

profile:1994年生まれ。大阪教育大学で特別支援教育を専攻。放課後デイサービスでの児童指導員を経て、ライターに。尊厳や見えづらいことをよく考えています。

***お出かけでの経験は、人生を豊かにしてくれるものだと思います。お出かけを諦めないといけない状況が生まれてしまっていることに、私は虚しさや悲しみを感じます。

そんな中、家族旅行を届け続けているLinoさん。愛美さんをはじめとした藤居さんファミリーの経験が誰にとっても当たり前になるように。これからもLinoさんを応援しながら、私も行動し続けていきたいです。